眼前に広がる海が大きく荒れている。海風が頬を殴りつける。しばらくそこに棒のように突っ立っていると突然、音も波もスッと消え、世界が一瞬だけ止まったかのような錯覚に陥る奇妙な余韻。それがsewiの音楽を聴き終わった瞬間に感じた、極めて率直な感想だった。
初めて出会ったのは御殿場casual。河野氏に会った印象は、奔放で飄々とし一昔前のプレイボーイを匂わせるような出で立ちで、初対面にも関わらずお互いタメ口だった気がする。それからライブを見、『最後の晩餐』を入手し、聞き込むごとにその世界観にハマり、それからというもの電車、自転車、バイク、散歩、仕事の休憩時間とシーンを問わず聴き狂った。飽きもせす似た様なテーマを誰もが繰り返し歌う昨今の音楽シーンの中において、sewiのリリックは痛烈に、幸せとは何かを賛美するのではなく、真っ向からとことん現実を語りかけてくる。まさにドラマのような現実は有り得ない。そこに僕は惹かれてしまった。すべてをありのままに書き興しリーディングする彼を単純に面白いと思ってしまった。そしてそれからというもの、新作を誰よりもひたすらに待ち望んだ。
そんな中、昨年京都gattacaがオープンし、その一環のイベントで再びsewiとの競演を果たし終えたときだった。1曲ゲストボーカルやりませんか?とオファーを受け、驚きと喜びで思わず二つ返事で快諾。短い納期のなかでどういう歌い方にするか、又、自分の場合日本語となるとなぜか声質も変わってくるので、本当に自分の歌声で良いのか不安になり試行錯誤しながらも、友人の力を借りレコーディングを済ませ、やや納期を過ぎた形でデータファイルを渡した。2~3日後届いたミックスと、更にその後に届けられた他の曲を聴き、間違い無く素晴らしい作品であると勝手ながらに確信した。
そしていよいよ明日、2013年1月9日、静岡
Further Platonixよりリリースされる。
ディスクユニオン各店舗等、様々な場所で取扱いされる(このGreen Leaf Distroでも)とのことなので、是非とも手に取って聴いて欲しい。
FTPS-012 sewi / [ 冤 - en ] 2013.1.9 5songs 1,200yen
http://3rdrecords.com/sewi/
以下、Further Platonixより引用
今作は、既存のシリアスな音楽性の中でも極めてロックに寄った作品に仕上がっており、聴きやすい作品に仕上がっている。その上で、すべての楽曲は従来の90s EMO / HCサウンド、ABSTRACTの匂いを感じさせながらも独自性を発揮しており、現代の日本のバンドシーンの中でも、ここまでヒューマニズムに特化したグループは稀であると言える。またゲストミュージシャンの参加も魅力であり、3曲目「I」では、関西が誇るHCバンドBURNING SIGNからMASAKIが入魂のワンフレーズで参加。4曲目「深緑」はnimの主なソングライティングを務めるshogoが作曲から参加し、ギターとピアノを収録。5曲目「no fate」では、静カニ潜ム日々のvo川元 裕一朗がゲストヴォーカルで参加。1曲目&5曲目では、京都のポップバンドである弦鳴から大釜豊がアコースティックギターを収録している。マスタリングは、Alan Smithee's MAD Universe/studio Zotの久恒 亮氏が担当。またタイトルは、NOTIIBELIKESOMEONEの元ヴォーカリストtaf氏による命名。 「無実の罪」「濡れ衣」などのネガティブな言葉の印象の裏側に「縁」や「円」などの想いが込められている。